日刊ゲンダイ掲載原稿
(連載期間)2008年8月23日〜11月29日
翼の上、微妙に草がない場所が滑走路。
世界にはパスポートなしで入国できる国がある。
もちろん正規に入国しての話だ。
その国はアフリカ大陸東端に位置し「アフリカの角」と称されるソマリア。
ビン・ラディンの潜伏が疑われ、アメリカ軍による空爆の可能性が高まっていた2001年1月。隣国ケニアから同国の首都モガディシュに向かい、私が乗った大型の古いプロペラ機は飛び立った。
微妙に塗装がはげた機体と必要以上に大きなうなり声を上げる4つのプロペラ。ボロボロの座席にはシートベルトすら付いていない。
そのレトロを通り越し骨董品に近い雰囲気は不安を掻き立て、着陸のために機体が急降下を始めた時には「墜落!?」の二文字が頭をよぎった。
しかしソマリアへの旅の真骨頂はここからで、機外に出た私の目に映ったのは見渡す限りのサバンナと土の滑走路のみ。
ターミナルビルはおろか管制塔もなく、貨物室から自分で荷物を運び出すと、滑走路脇に待機していた乗り合いタクシーから自動小銃を小脇に抱えた呼び込みが凄い形相で飛び出してきて私の腕を引っ張る(その迫力に殺されるかと思った)。
未だにあれ以上凄い国際空港は体験したことがない。
あまりにも常識外の体験だったが、面倒な入国審査や時間のかかる手荷物の受け取りがないフライトはある意味快適で、「世界は広いなぁ〜」と、感心した。